ブルグマンシア
連休とはいえ、 この田舎の駅ではホーム一面を見渡せる程には空いている。 同じホームで電車を待ちわびている人は 己以外に 1 、 2 人ぐらいだろうか。 退屈のあまり同族を数えていると 千鳥足なのか、 不規則な足音が聞こえてきた。 足音の主に視線を向けると 目が虚ろで体を左右に揺らしながら 歩いている。 マスクを付けているため 赤らんでいるのか判断が出来ないが 十中八九あれは酔っ払いだろう。 放っておいてもいいが 退屈しのぎにと、偽善を抱えながら 彼に歩み寄る 「おい、にぃちゃん大丈夫か?」 比較的好印象を受け取れるように 笑顔で接するが … 「ダメだなこりゃ目の 焦点があってねぇぞ。」 「大丈夫ですか!? 今駅員さん呼んできますね。」 ホームにいたもう 1 人の男性は 素早く介護し酔っ払いであろう彼を 椅子に座らせ、駅員を呼びに向かった。 これなら、放置しても大丈夫だろう。 興味をなくした私は元居た位置に戻り 又もやボーッと見慣れた景色を眺める。 [間もなく …1 番線に … 電車が参ります 黄色い線の内側で … ] 待ちわびた事を察したかのように 電光掲示板からアナウンスが響き渡る。 漸くかと、待っていると 先程の酔っ払いがフラフラと千鳥足で 黄色の線まで向かう。 よく見ると酔っ払いはイヤホンをしていた。 しかも、ケーブル付きのやつだ。 今どき珍しいと考えに耽っていると、 ケーブルが引っかかったのかブチッと 音を立てスマホから外れた。 酔っ払いはかなり大音量で 聞いていたのだろう 近くに居た私にでも聞こえた。 『落っこちろ』 「え?」 っと思ったのも束の間 酔っ払いはそのまま身を投じた。 その行為が当たり前であるように 酔っ払いは疑問にも思わず真顔で 落ちていった。 「痛っ … あれ … ?何で俺線路にいるんだ … ?」 呆気に取られていると視界の外から 鉄の塊がそれなりの速さで動物を 轢く音が聞こえた。 各々が叫び散す中、先程の酔っ払いの 発言に疑問を感じた。 自殺では無いのか … ? 【聞いたか?今度は ●● 県でマグロが 見つかったとよ。】 [全く何件目だ?ニュースでも、注意喚起を しとると言うのに。] 【逆を言えば注意喚起ぐらいしか 出来ませんからね … 】 [でも、何で自殺者が増加したんですかね?] 【 5 月に入ってから途端に増え始めた … としか